米国大統領選挙での共和党と民主党支持者の分断や、東京都知事選挙でのTwitter上の対立が目立っていたので、この本を読んだ。
世界中で分断が進んでいると思うし、皆が「自分とは違う考えの奴ら」に怒りを覚えている。
この対立はなぜ起こるのだろうか?
まず題名にもある通り、良い対立と悪い対立が存在する。
良い対立とは相手の意見を尊重しあい、お互いの意見を議論しあうことで新しい考えや行動につなげることができるものだ。
人間社会では対立をなくすことはできないので、この良い対立を目指していくべきというのが作者の主張だ。
対して悪い対立はお互いの意見を否定しあい、ステレオタイプの対立相手を生み出し、そしてお互いに憎悪を生むような対立だ。
これは概して極端な二項対立構造になることが多く、また質の悪いことにメディアやSNSが悪い対立を煽る。
特に悪い対立を生み出している原因の一つにSNSがあるだろう。
まずSNSでは画面の向こう側にいる相手のことがわからない。
そのため相手の意見が断片的に伝わってくるのに加え、周囲の意見とともに増幅していく。
さらにTwitterなどではお互いの意見を話し合う構造になっておらず、一方的に意見をぶつけ合う場になっている。
こうして憎悪が膨れ上がり、憎むべき相手がイメージとして出来上がっていく。
お互いの陣営が焚き火によって浮かび上がる影を憎み合っているような状態だ。
大きく邪悪に見える相手はあくまでも影であって、本当の人間を捉えることはしない。
このSNSによる弊害は陰謀論や反ワクチンをも生み出している。
今まで以上にメディアリテラシーが重要になっているだろう。
このSNSで広がる陰謀論などの性質は「Intelligent Trap」にかかれているので合わせて読んで欲しい。
悪い対立を扇動するもの(メディアや権力者)を疑い、単純な二項対立を避け複雑な意見の存在を認めるだけで悪い対立にのめり込むことはほとんど無くなるだろう。
またすでに怒っている悪い対立を解消する方法もいくつか紹介されている。
私が特に約に立つと思ったのが、対立する相手の他のアイデンティで自分と共通するものを見出すことだ。
これはなんでもよくて、好きな趣味や出身地などでもいい。
対立する相手が得体のしれない邪悪なものではなく、自分と同じ要素を持つ人間だとわかるだけで悪い対立の要素はグンと減る。
自民党支持者も立憲民主党指示者も、同じサッカー好きであれば日本代表の応援はできるだろう。
悪い対立を避け良い対立に変えるためには、相手を知り自分を知ってもらうことから始まる。
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