初めに
閲覧ありがとうございます。このブログを読んでいるということは、防衛医大に受験または入学するか迷っているかと思います。外から分かる防衛医大の情報は限られており、ましてや防衛医大卒業後の自衛隊医官としての仕事内容などは調べようがないでしょう。
唯一の情報源としてはリクルートの自衛官ですが、彼らは嘘しかつきません。自分の勧誘した学生が入隊すると評価が上がるため、嘘をついてでも入学を勧めてきます。加えて医学部のことをよく分かってないです。
また巷に流れる防衛医大の噂も嘘が多いです。入学時に全裸で検査を受けるなどは嘘なので安心してください。
一応身体検査で合格基準がありますが、よほど大きな病気などなければ受かります。
視力検査はみんな目が悪いことが分かっているので当たるまで答えられます。
(遠くが見えても、病気が見えなきゃ意味がない。)
筆者は防衛医大に入学し、卒業後は自衛隊医官として勤務していました。自衛隊医官の仕事はやりがいも多く、貴重な経験を積むことができたため自分は後悔はしていません。
しかしながら筆者の周りには防衛医大に入学したあとに自分の思うようなキャリアが積めず困っている人、中には不幸にもキャリアを挫折した人も見てきました。
そのような人を減らしたい思いから、この記事を書き上げました。
この記事を読んで本当に防衛医大に入学するべきかどうか判断してください。途中でドロップアウトすると地獄を見ることがあるので。。。
※全文はnoteにて有料配信しています。ここでは途中まで無料で読むことができます。
防衛医大に行くべき人、行くべきでない人
防衛医大はその特殊性から向き不向きがはっきりと別れます。自分が行くべき人の基準に当てはまると思ったならば、その時点で入学することをお勧めします。ただもし行くべき人でない基準に一つでも当てはまったならば、このnoteを最後まで読んでよく考えることを勧めます。
防衛医大に行くべき人
自衛隊として心から国と国民に尽くしたい人
自衛隊医官として災害派遣や海外派遣に参加したい人
とにかくお金がなく、国立大の学費すら厳しい人
家庭の事情で今すぐ一人立ちをしなくてはならない人
防衛医大に行くべきでない人
自衛隊に関わる仕事はしたくない人
とにかく医療のみをやりたい人
最先端の手術などに憧れている人、やりたい研究などが決まっている人
働きたい病院がもうすでに決まっている人
普通の医師に憧れる人
全国転勤が嫌な人
以上に当てはまるものはありましたか?
もし防衛医大に行くべきでないリストに心当たりがあるようならば、この記事を読んでから入学を検討した方がいいでしょう。
それでは以下に防衛医大と自衛隊医官に関して、自分の経験を踏まえて説明していきます。
この記事の箇条書き
防衛医大生は鳥籠の中の生活を行う。内部は閉鎖的であり、外出も自由にはできない。
(ただそれなりに学生生活は楽しい。辛いのは低学年だけ。)
★防衛医大を卒業すると4500万円の借金を負うことになる!!
患者は健康な自衛官がほとんどであり、風邪と生活習慣病、外傷以外の症例は少ない。(適応障害も少々)
予算の問題から年度末には手術ができなくなることがあるなど、自分の目指す医療はできない可能性がある。
自衛隊医官としてのキャリアはかなり特殊であり、通常の医師として働く場合遠回りになる可能性がある。
防衛医大はこんなところだ!!:概要編
防衛医科大学校とは
防衛医科大学校(以下、防衛医大とします)とは防衛省直轄の大学校であり、医学部(医学科、看護学科)のみの単科の大学校です。
受験の時期が少しずれているので、医学部を受験する人は模試のように受験することが多いのではないでしょうか。受験情報や学生生活の表層的な情報は公式HPに記載があるので目を通して見てください。(https://www.mod.go.jp/ndmc/)
このnoteでは表に出ていない情報を主にまとめていきます。
立地
埼玉県所沢市にキャンパスがあり都内へのアクセスは西武線で新宿・池袋まで30分程度なので関東国立医学部としてはかなり好立地です。ただキャンパス周辺には何もありません。駅前にコンビニがある位なので、買い物は一駅先の所沢駅または新所沢駅周辺か都内まで出ることが多いでしょう。(https://www.google.com/maps/@35.8015082,139.4637018,17z?entry=ttu)
防衛大学校とは違うの?
似たような組織に防衛大学校がありますが、こちらは主に軍事に特化した脳筋教育を行っています。
防衛大学校は神奈川県横須賀市にあり、基本的にほとんど関わることはありません。卒業後に幹部候補生学校(後述)で関わることがありますが、仕事で関わることもあまりありません。
身分
防衛医大に入学すると特別職国家公務員という身分になります。公務員でありながら授業を受ける学生として過ごすことができます。もちろん公務員であるため給料が発生します。その額は月額120,200円であり、大学生としてはかなり有難いでしょう。ボーナスも年2回支給されます。
ただし公務員であるためバイトは禁止されています。家庭教師やスタバのバイトはできません。
あきらめましょう。
加えて防衛医大は学費無料かつ寮も完備しているので、入学したら生活に困ることはありません。これは防衛医大の一番のメリットと言っていいでしょう。(ただ唯一のメリットかもしれません)
看護学科と関わりはある?
部活などで関わることがあるみたいです。
ただ著者が在学中はなかったため、正確な情報は不明です。授業内容や病院実習の内容は看護科なので異なると思いますが、給料や生活は基本的に看護学科(自衛官コース)も同じです。技官コースもありますが、こちらは一切関わったことがなく全く不明です。
※ただ看護コースも卒後のキャリアとしては似通っていると思います。ぜひ参考にしてください。
防衛医大のキャンパスライフ=鳥籠の中の生活
防衛医大入学後は壁に囲まれたキャンパス内で生活することとなります。この塀によって現実世界から隔離されるため、キャンパスライフというよりは収容所生活といった方が近いでしょう。
隔離と言ったのは誇張でもなんでもなく、基本的に平日の自由な外出は不可です。例外として平日の外出許可がありますが、指導官(後述)に申請した上で20時の門限まで外出できるという限定的な許可です。17時までは授業のため自由時間は3時間のみであり、更にいうと周囲に碌な店もないため出てもすることはありません。また平日の飲酒も許可がなければ不可です(後述)。
夜間に脱走することも可能でしたが、バレると停学になります。
外から通えばいいじゃん、と思うかもしれないですが全員が寮生活となります。そして寮は大隊、中隊、小隊と別れて生活してます。
軍隊かよと思いましたか?そう、軍隊なんです。
まず大隊ですが1大隊(1学年から4学年まで)と2大隊(5学年と6学年)に別れており、それぞれに対応した寮で生活します。寮に関しては後で詳しく説明するので、ここではこの大隊に関して説明します。
この大隊によって生活スタイルが変わります。まず1大隊はCBT(病院実習前に受けるマーク試験です)に合格する前の学年全てが所属しています。
寮は1大隊のみが住む建物に別れており、先輩後輩が二人一部屋で生活を行います。女子も同様です。
そして2大隊は病院実習を行う5,6学年が所属します。病院実習はローテートしている科目によって生活リズムが不規則なため、1大隊より遥かに自由なライフスタイルを送れます(ただし塀の中からは自由には出れません)。部屋は二人一部屋のままですが、同期とのシェアハウスです。
そして大隊の下に中隊があり、全部で4中隊に別れます。この中隊は住む寮によって別れており、イメージとしてはハリーポッターの寮と同じです。性格で寮分けをしている分ではありませんでしたが、出身地が固まることが多く各中隊で雰囲気が違ったりします(3中隊がスリザリンのイメージでした)。
ハリーポッターと異なる点は2中隊は女子のみの中隊です。女子は1学年20−25人程度で男子禁制の女子寮に住んでいます。
防衛医大を知る上で必要な用語
上で大隊などの軍隊用語が出てきましたが、防衛医大はその特殊な環境から一般社会で使わない用語が沢山あります。以下の説明でも防衛医大用語を使用していきますので、まずここで各用語の簡単な説明をしましょう。(順不同)
学生隊:防衛医大学生が運営する組織。寮生活の自治をある程度担っており、新入生の教育(意味深)などを行っている。
指導官:防衛医大の教員ではなく、ゴリゴリの自衛官。外出許可や訓練指導などを行う。医学知識は皆無なので授業や研修には一切関わってこない。陸海空おり幹部自衛官から曹まで幅広くいる。
自衛隊の階級:上記指導官の階級は自衛隊に準じている。自衛隊の階級は会社組織に対応して考えると分かりやすい。幹部→役員から部長レベル、曹→平社員、士→アルバイト。防衛医大では自衛官は幹部と曹しかいない。防衛医大生は卒業すると2尉という幹部になる。
点呼:人数が揃っているか調べる集まり。自衛隊ではどこでも行う。防衛医大では不正外出をしてないかどうかを調べる目的がメイン。
制服:冬服、夏服に加えて作業服、校内服、礼服の計5種ある。色々使い分けるが基本的には一番着やすい校内服をきて生活することが多い。
欠食:防衛医大は朝昼夕全てが食堂で食べれるように予算が組まれている。ただ週末は金曜夜から日曜夜の間は外に泊まることが認められているため、週末の食事が必要かどうか事前に調査がある(1週間前くらいに)。そして食べない分の食事代に対応したカップラーメンなどが支給される。
週番:何ヶ月かに一回当番が回ってくる雑用。寮の運営に関しての雑用を行うが、主に見回りと郵便物の受領を行うだけである。
外出許可・外泊許可:外に出る、外泊する時に許可が必要。基本的には外出時間を記載するだけなので許可自体は簡単に降りる。ただし無断外出などの不祥事があった場合は連帯責任として全員が外出禁止になる。
図解:防衛医大の1日
以下に防衛医大公式HPにある図を持ってきました。
この図はかなり簡略化されており、防衛医大の本当の生活を表してはいません。
ここでは上で述べた1大隊(1-4学年)の基本的な生活を時系列で説明していきましょう。
なおここでは自衛隊式の時刻記載方法を用います。(例:午前10:00→1000 読み方 ヒトマルマルマル, 夕方16:30→1630 ヒトロクサンマル)
0630:起床ラッパが鳴る。このラッパでベッドから起き上がり、ベッドメイキングをして制服に着替える。この時着る制服は下写真のもので作業服といい、訓練の際も着る。
0635:朝点呼再度ラッパがなる。このラッパを合図に外まで駆け足で向かい、外で全員並んだあとに点呼を行う。
0645-0730:食事と環境調整(掃除など)食事と歯磨きなどを終えたあと授業の準備と指定された制服に着替える。制服は夏服、冬服、校内服と別れており結構面倒臭い。
0745-0800:国旗掲揚外に全員集合し整列した後に0800に国旗掲揚を行う。国旗掲揚まで10分程度外に並んで静かに待機するため、著者は間違った進路を選んだことを後悔しながら待機していた。
0800-0820:朝礼。全体に対して偉い人が挨拶する程度。その後各学年に別れて情報伝達を行ったのち整列し教場まで行進していく。この行進は歩調や手の高さも揃えて行うため、北朝鮮のパレードを想像していただきたい。流石に銃は持っていないが、鞄を片手に行進する。雨天でも傘をささずに行進する。
0830-1130:午前授業学年によって内容は異なるが、授業は普通の医大と同じである。ここに関しては自衛隊色はほとんどない。ただ全員出席が義務であるため1限を休むなどは基本的には出来ない(体調不良を除く)。
1150-1240:昼食教場から寮に戻り自由時間と昼食。帰る際には行進は必要ない。またこの時間にキャンパス内のコンビニに行くこともできる。
1300-1700:午後授業内容は午前と一緒。1600くらいには授業が終わっていることも多い。夕食までは自由時間となる。
1730:国旗降下キャンパス中に国歌が流れ、その間は国旗の方向に向かって起立を続ける。自分の部屋にいれば起立しなくていいため、急いで部屋の中に隠れる。
1730-1830:夕食食堂で夕食。
1830-2030:部活(体育会系)防衛医大生は必ず体育会系の部活に所属することが求められる。そのため課業後には必ず部活を行う。1年次に決めた部活を基本的には4学年まで継続する(後に詳しく後述)。この時間帯に許可を得れば外出は可能だが、2000には帰ってこなくてはいけない。
2100:夕点呼所属する中隊毎に点呼を行う。全員いるかどうかの確認のみだが一年生には辛い時間かもしれない。
2100-2400:自習自習となっているが、基本的に何をしてもいい。勉強もしてもいいし、テレビやPCを見ていても構わない。
0000:消灯寮の電気が消される。ただ勉強を行うために部屋の電気をつけることは可能。あくまでも廊下や共用部分の電気のみ消える。
以上が1大隊の一日の大まかな流れになります。
ただし2大隊(5,6年生)の生活は全く異なる。
2大隊に関しては防衛医大病院での病院実習がメインであり、生活時間はまちまちです。また点呼なども基本的にありません。かなり自由な生活になります(寮生活ではありますが)。
1週間の流れは?
1日の流れは上述した通り。基本的には平日はこの流れを繰り返すことになります。ただ週に一度舎内点検という寮の点検が行われます。これは指導官が朝に各部屋を見回り、整備されているか確認する定期行事です。
そして週末は金曜の夜から日曜の2300までで、許可を取れば外出と外泊が可能です(基本的に簡単に許可は降りる)。防衛大では外泊用に部外に下宿を借りることが多いが、防衛医大ではそのようなことをしている人はほとんどいない。
日曜の2300までに帰れば国内の何処にいてもいい。
ただし海外に行くには許可が必要。海外渡航許可は1ヶ月前から申請が必要で中国やロシアなどの国は許可が降りないこともある。
これが防衛医大の寮だ!!
寮は二人一部屋で生活しますが部屋の真ん中にしきりがあり、お互いはほとんど見えないようになっています。ただ音は筒抜けです。テレビやPCを置くことは可能ですが、かなり狭いです。また別途契約することでWifiの設置も可能です(ルーターを自分で購入してもいい)写真のタイプは1中隊の寮のみで、基本的にはもう少し狭いタイプがほとんどです。エアコンは全館空調ですが、予算の都合上使える期間が決まっています。
キッチン、冷蔵庫、シャワー、トイレは全て共有で、各フロアにそれぞれついています。また大浴場もあります。
買い物は?
平日外出が限られていると言いましたが、キャンパス内にファミリーマートがあるため日常生活に必要なものは揃います。また有料食堂と床屋、ATMもあります。Amazonなどの通販も可能で、荷物は週番が受け取ってくれます。家具や家電などを申請すれば揃えることも可能ですが、部屋が狭いため置くスペースはほとんどありません。
部活動について
防衛医大では一般の医学部とは異なりサークルなどはなく基本的には全員が部活動に参加することになっています。この部活動は運動が苦手でも必ず体育会系部活に一つは所属しなくてはなりません。
文化系の部活動もありますが、体育会系部活の合間に行うことが多いです。
体育会系の部活は基本的に1-4学年まで行いますが、部活によっては6年まで参加を強制されることがあり、最初の勧誘の時にはその事実を隠されて嘘の勧誘を行うことが多いので注意が必要です。
さらに部活によって忙しさが全く異なっており、1日1時間のみの緩い部活もあれば、1日3時間週5回を6年間行うような部活もあります。体育会系の部活を選択できるのは最初の1回のみであり、その後変更は基本的にできません。そのため最初の選択が非常に重要になってきます。(注:著者の在学中は変更不可であったが、今は1年時に一回変更は出来るとの噂。)
なので運動が苦手でも部活を選べば苦労はしないと思います。
他大学の医学部では部活に所属しないと試験の過去問が手に入らないなどのデメリットがあるらしいですが、防衛医大は全寮制であり過去問は共有され誰でも手に入ります。
また部活動の知り合いがいないと病院実習や研修医の際に困ると脅されますが、あまり関係ありません。
授業について
授業に関しては座学・実習ともに医学教育がメインであり、自衛隊的な内容はほぼありません。
ここは普通の医学部とほとんど変わらないと思います。
ですが防衛医大に特徴的な授業として防衛医学があります。
防衛医学では戦傷などに関して学びますが、その比率は高くなく試験なども苦労しません。
ちょっと変わった授業程度なのでほとんどの卒業生は内容もほとんど覚えていないでしょう。
それが自衛隊衛生にとっていいことだとは決して思いませんが。
訓練って?
防衛医大と聞くと銃を撃ったり匍匐前進したりしている印象があるのではないでしょうか?
これは半分本当ですが、半分は嘘です。
まず日常生活では自衛隊的な訓練は全く行いません。初歩的な動作(敬礼の仕方、行進の仕方)は一年の最初に行いますが、これは体力的に厳しいものではなく礼儀を身につけるようなものです。また体育の授業として水泳などはあるが高校などで行っているレベルです。
ただ年に3回程度体力検定と行って3000m走、腕立て伏せ、腹筋、懸垂、遠投を行う検定があるが、基準に達しなくても大した問題にはなりません。
しかしながら長期休暇の前に2週間から1ヶ月程度訓練期間があり、その期間は授業はなく訓練を行っています。この訓練は2学年の訓練が最もキツく、4kmの遠泳と富士山登山、射撃訓練を行います。
この2学年の訓練だけは体力的に厳しいですが、その後の訓練は自衛隊部隊の見学などで全く厳しくありません。沖縄や硫黄島への見学を行うだけの訓練もあり、ほぼ修学旅行みたいなもんです。
遠泳があると聞き、泳げない人は自信を無くしたかもしれませんが、1年時にプールでの水泳練習を全員行うので、どんな人でも基本的には遠泳まで出来るようになります。なので訓練に関してはあまり恐れる必要はありません。
学年ごとの生活(ゴミ→畜生→人間→神様への進化)※著者の時代であり現在は変わっている可能性あり。
これまで防衛医大の生活の概要に関して説明してきましたが、ここからは学年毎にどんなことを行うか著者が覚えている限り説明します。記憶があやふやになっていたり、また今は行われていない風習があるかもしれませんが参考になれば幸いです。昔より厳しさは年々和らいではいるとは言われますが、同年代の他医学部より厳しさは間違いなくあります。
まず防衛医大生の生活を語る上で、防衛医大生の学年別の序列を知る必要があるでしょう。普通の大学でも上の学年が偉そうにしていると思いますが、防衛医大ではレベルが違います。相撲部屋のような絶対的な権力差が学年間に存在しています。入学時に先輩から言われた歓迎の言葉が、『2年生は犬畜生、3、4年生は人間、5、6年生は神様だ。お前ら1年は人間様の部屋に置かせてもらってるゴミ屑だ!!』でした。まずはゴミ屑の一年生から徐々に進化していく様を見ていきましょう。
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